
150年の伝統を未来へ紡ぐ。小柳畳商店:小柳竜士さんインタビュー
Kohakuはこのたび、長崎・諫早の老舗「小柳畳商店」の製品を正式に取り扱わせていただくことになりました。
1865年創業。150年以上の長きにわたり、地域とともに畳づくりを続けてきた小柳畳商店。時代の変化に合わせて技術を磨きながら、伝統を守り続けてきたこの店に、今、新たな風を吹き込んでいるのが五代目・小柳竜士さんです。

本記事では、竜士さんへのインタビューを通して、Kohakuが惚れ込んだ“畳の新しい可能性”と、伝統と革新を両立させる彼の想いをお届けします。
幼い頃から「畳職人になる」と決めていた
小柳竜士さんが畳職人の道を志したのは、驚くほど早い時期でした。
「幼稚園の頃にはもう、“畳屋さんになる”と心に決めていたんです。3代目だった祖父にも“お前が継げ”と言われていて、その言葉がずっと心に残っていました。」

生まれ育った家は畳屋。身近に畳がある生活の中で、その香り、肌ざわり、丁寧な手仕事に自然と惹かれていったのだそうです。高校卒業後は畳製作の専門学校に進学し、本格的に技術の道へ。熊本産のい草に出会ったことが、素材に対するこだわりの原点となりました。
技術だけではない。「届ける力」も磨く
竜士さんの畳づくりは、職人としての技術を極めることにとどまりません。いかに畳の価値を現代に伝えるか、という「発信力」にも強い関心を持っています。
たとえば、近年手がけている製品の一つが「い草のブックカバー」。読書の合間に、ふわっと森林浴のような香りが立ちのぼる癒しのアイテムです。また、フローリングでも使いやすい「正座・あぐら用クッション」や、赤ちゃんの名前をい草に刻む「畳の命名書」など、どれも“日常に畳を取り入れる工夫”に満ちています。

「実はこれらの商品は、父が始めたことがきっかけでした。でも売り先がなくて。自分がAmazonで販売を始めたところ、好評をいただけるようになって。やっぱり“デザインが良い”って声をよくいただくのが嬉しいですね。」
職人としての誇りと、消費者目線での柔軟なアイデア。その両方を持ち合わせているのが、竜士さんの強みです。
“畳離れ”の時代に、どう向き合うか
長年にわたり日本の暮らしを支えてきた畳ですが、現代では和室の減少とともに需要も減り、職人の数も減少傾向にあります。
「変わらないといけないと思っています。これからは“必要とされる形”に変えていくことが求められています。ただ畳を作るのではなく、若い世代や海外の方々にも響くような、新しいプロダクトを提案していかなければ。」

竜士さんは、今の時代に必要なのは「伝える力」と「変える勇気」だと語ります。特に、現代の消費者は感度が高く、“何を選び、なぜ買うのか”を強く意識している世代。そうした人たちに選ばれる畳製品を生み出すことが、伝統の未来を守ることにつながると信じています。
畳の魅力は「落ち着く」こと——“和のペルシャ絨毯”としての可能性

竜士さんが畳に込めている最も大切な価値は、「落ち着き」だと言います。
「畳って、日本人のDNAに刻まれていると思うんです。香りや肌ざわりが、どこか懐かしくてホッとする。それはきっと、海外の人にも共通する感覚だと思います。」
この「心が落ち着く感覚」を、言葉を超えて伝える方法があるとすれば——それは、実際に畳に触れてもらうこと。そのために、日常的に使える小物やインテリアに形を変え、暮らしの中に自然と馴染む製品を届けたいと竜士さんは考えています。
そして彼は、畳の未来をこうも語ります。
「ペルシャ絨毯が世界中で高級ラグとして愛されているように、畳も“和のペルシャ絨毯”として受け入れられるポテンシャルがあると思うんです。」
ただの床材ではない。文化と歴史、職人の手仕事、そして素材の力が一体となった畳は、世界に誇れる“日本発のラグ”になれる——。
その言葉には、150年続く家業を背負いながら、次の150年を見据える竜士さんの確信がにじんでいます。
Kohakuとの出会い、そしてこれからの挑戦
Kohakuが竜士さんと出会ったのは、まさに「畳を今の暮らしにどう届けるか」を模索していた時期でした。

竜士さんの語る未来へのビジョン、そして製品のセンスや品質の高さに、Kohakuは深く共鳴しました。伝統の技術と、現代的な感性。両者が出会うことで、畳の可能性は大きく広がります。
「これからは海外にもどんどん届けていきたい。Kohakuさんと一緒に、それを実現できれば嬉しいです。」
畳の価値を、もう一度、世界へ
畳は決して古びた存在ではありません。むしろ今だからこそ、その自然素材のやさしさや香り、肌ざわり、空気感が見直されています。Kohakuは、小柳竜士さんとともに、“新しい畳のある暮らし”を国内外に提案していきます。
今後、Kohakuのオンラインショップでは、小柳畳商店の新製品ラインナップを順次展開予定です。
どんな空間にもそっと寄り添い、心を整えてくれる“畳の力”を、あなたの暮らしにも取り入れてみませんか?